【旅】エフェソス【トルコ4】

エフェソス

四日目が私が大好きな遺跡、エフェソスだ。
女神アルテミスを信奉したギリシア人都市で、クレオパトラとアントニウスが歩いたであろう大通り、素晴らしいレリーフやモザイクなどが数多く残っているため、一つずつ紹介してゆく。

<アスクレピオスとヘルメス>
この二枚は一つの柱の表と裏に彫られていたものだ。
ギリシャ神話では医神アスクレピオスはヒュギエイアの杯・アスクレピオスの杖を持ち、伝令神ヘルメスはカドゥケウスの杖を持つと描かれる。
恐らくここは医院もしくは薬局だったのだろう。

<トライアヌスの泉>
皇帝トライアヌスに捧げられた泉で、当時は大きな池があり、彫像の足下から水が流されていたらしい。
現在の形は当時のものではなく、修繕の際に一部縮小された。

ここから澄んだ水が溢れ、地中海の眩しい陽射しに煌めく様はとても美しかったに違いない。

<ハドリアヌス神殿>
こちらは皇帝ハドリアヌスに捧げられた神殿。
修繕後ではあるがレリーフが見事で、手前が運命を司る女神ティケ、奥はメデューサとなっている。

<モザイクの床>
住居跡に残る精緻な床。
私はモザイクや螺鈿、豆タイルなどが大好きだ。
小さな欠片を繋ぎ合わせて一つの何かを描き出すという表現に惚れ惚れしてしまい、いつまででも眺めていられる。

<セルシウス図書館>
このエフェソスで一際目を引く巨大な建物。
117年に建設され、かつては12万冊以上の蔵書があったらしい。
アレキサンドリア、ペルガモンと並び世界三大図書館として名を馳せていた。
門に並び立つのは知恵の女神ソフィア像、徳の女神アレテー像、思考の女神エンノイア像、認識の女神エピステーメー像。(ただこちらはレプリカで、本物の女神像はエフェソス博物館所蔵とのこと)

この他にも古代の街並みを感じさせるものが沢山あって、何処からどう撮影すればいいのか迷ってしまう。

形状でお察しかとは思うが、トイレである。
ご主人様が使う前に奴隷が座って温めておいたらしい。

続いては謎の足跡。
これは「世界最古の娼館の看板」と言われている。
摩滅してしているのと光の加減で少々分かりにくいが、足跡の上には十字が刻まれ、方向を示しているらしい。
そしてこの娼館と図書館は地下道で繋がっており、「図書館に行ってくる」と言い残して娼館に籠もることも出来たらしい。
また、この足跡に関しては「これより小さい者は娼館に入ってはだめよ」という年齢確認の意味もあったらしい。

……つまり、そういった数々のエピソードは真偽がどうも危ういようなのだが、人間くささが感じられて個人的には非常に気に入っている。
もし自分でこの時代の物語を書くことになったら秘密の地下道を作り、厳粛な図書館と淫靡な部屋を行き来させることだろう。

<アルカディアン通り>
エフェソスの最後はこの通り。
当時はこのすぐ500メートル先まで海が来ていたらしい。

道の両方に沢山の松明が掲げられ、多くの店が立ち並び栄えた港の大通りで、エフェソスに滞在したクレオパトラとアントニウスもここを歩いたと言われている。
二人の逢瀬の地というイメージが強いエフェソスだが、クレオパトラの実妹アルシノエ4世が命を落とした場所でもある。
クレオパトラとの王位争いに敗れたアルシノエはこのエフェソスに幽閉されていたが、アントニウスが実権を握った直後に彼の部下の手で毒殺された。
しかもそれを命じたのがクレオパトラ、という説が濃厚なのだ。
クレオパトラが一体どんな思いでこの通りを歩いたのか、今でも時折考える。


 
 
 
見応え満点のエフェソスを後にして、バスで今夜のホテル向かう。
これは途中のドライブインの風景だ。
トルコは国土が広いため、ツアーでも個人でもバス移動が基本となる。
ツアーの場合は貸し切りバスで旅をすることになるが、二時間に一度くらい、このようなドライブインに立ち寄ってくれる。
それぞれに地域色があり、薔薇の化粧水やオリーブ石鹸が有名だったり、ロクムの種類が豊富だったり、ヨーグルトが美味しい街だったりと楽しめるのもバス旅の大きな魅力だ。

そんなトルコのドライブインや露店などには、生ジュースのコーナーがよくある。
季節にもよると思うが、私が旅していた時期は柘榴とオレンジの組み合わせをよく見た。
柘榴のみ、オレンジのみ、ミックスでも注文出来る。
様々な料理に美味しい美味しいと繰り返すのも芸がないが、搾りたて、水なし氷なし、素材100%の柘榴とオレンジジュースなど美味しいに決まっているのだ。


 
 
そしてバスはパムッカレのホテルに到着。
宿泊したホテルは温泉を引いており、蛇口を捻ると熱いお湯が迸る。
バスタブにて温泉のお湯を楽しめるのだ。
旅の折り返しで少し疲れが出始める頃だったので、非常に有り難かった。

こちらはそのホテルのビュッフェのデザート。

基本的にトルコのお菓子は甘い。
「脳髄にくる甘さ」という表現が相応しい。
このように、シロップに漬けたものが多いのも特徴である。
これだけで食べると甘過ぎる気もするが、チャイやトルココーヒーと合わせると丁度よい。
ちなみにトルココーヒーとはコーヒー粉末を煮出したものなのだが、飲み終えた後の粉の状態で運勢を見る「コーヒー占い」も楽しい。

こちらの繊維状のものは「カダイフ」、小麦粉から作られる。
バターと混ぜて焼いてシロップをかけたり、魚介などにまぶして焼いたりと、トルコではメジャーな素材らしい。

写真を失念してしまったのだが、このカダイフを使った「キュネフェ」というお菓子がある。
カダイフの中にチーズをつめて焼き上げ、更にその上にカイマック(クロテッドクリーム的なもの)をのせて食べる。
焼きたてはチーズがとろりと溶け出して、素晴らしく美味しいのだ。
個人的にはトルコのお菓子はこのキュネフェが一番好きで、時々無性に食べたくなる。
ちなみにこのカイマックをパンにつけて蜂蜜を垂らして食べたりもするが、これも悪魔的に美味しい。
カロリーを気にしてはいけない。

乳製品系といえば、「アイラン」という飲み物もある。
「塩味」のヨーグルトドリンクなのだが、これも羊肉のケバブやキョフテ(トルコの肉団子)などによく合う。
料理というのは風土に根ざして形成されてゆく味なのだな、としみじみ思う。
 
 

今日の猫と犬と孔雀

エフェソスの遺跡の上にて。
来世ではこのようなトルコの猫に生まれ変わり、遺跡の上で微睡むのもいいなと夢見ている。

ドライブインにて放し飼いにされていた孔雀。

五日目パムッカレとコンヤ編に続く。

[ 【旅】エフェソス【トルコ4】 ]TRIP, 2019/04/10 22:16