【旅】旧南会津郡役所と和泉屋旅館【会津田島】

先の日記に書いたように、七月末に会津に行ってきた。
一番の目的は会津田島の和泉屋旅館に泊まることだったが、その他にも様々な場所を楽しく巡ってきたので、二泊三日の旅の記録にお付き合いいただけるとうれしい。
 
 
一日目、北千住駅から特急のリバティ会津に乗り込み出発。
今回は会津方面の東武フリーパスを利用したので、一番最後に詳しく紹介する。
9:12発で12:24に会津田島駅に到着。

リバティ会津は、乗換なしで会津田島駅まで一本で行くことが出来る。
駅にはコインロッカー、観光案内所、レストラン、売店と一通り揃っているが、特筆すべきはこれ!

駅舎に日本酒の自動販売機があるのだ。
一杯200円で、横の売店にて専用のコインを購入する。

どれにするか迷ったが、今月のおすすめである花泉の大吟醸にしてみた。
柔らかくすっきりとした飲み口で、夏の冷に最高。
駄目だ。
こんな魔の機械があったら、着いてそのままここに根が生えてしまう。
 
 
観光案内所に立ち寄り、自転車を借りるつもりだったが「このくらいの距離なら徒歩でもいけますよ」ということで荷物だけ預けて歩いてみることに。
 
 

トポリーノ

まずは昼食。
蕎麦と迷いに迷った結果、デザートが美味しいという評判と、次の目的地に近かったこともありトポリーノへ。

ランチメニューは前菜の盛り合わせにメインを選ぶ形で、私はトマトとアサリのパスタにしてみた。

デザートはこの日、全部で四種。
どれもこれも美味しそうで選べず、盛り合わせをお願いしてみたところ、快諾していただけた。
そんな魅惑の盛り合わせをご覧あれ。

前菜は揚げたてでサラダのドレッシングも美味しく、パスタの茹で加減も丁度良く、自家製デザートはどれも丁寧に作られていて、その上、お一人で切り盛りしているというオーナーの女性も優しく、幸先良い旅のスタートだった。
 
 

鴫山城跡

トポリーノから数分歩くと、鴫山(しぎやま)城跡に着く。

直江兼続の弟・大国但馬守実頼が城代をつとめた山城で、加藤嘉明が会津領主となった際に廃城となった。
現在、建物はもう殆ど残っていないのだが、草に覆われた侍屋敷や空堀の跡にかえって想像を掻き立てられる。

頂上まで登るつもりでいたが、大門のあたりで雷鳴が聞こえ始めてしまい、この後にまだ回りたいところもあったため早めに立ち去ることに。
 
 

旧南会津郡役所

その鴫山城跡からまた少し歩くと、旧南会津郡役所がある。

明治18年築の擬洋風建築で、ギリシャ風の円柱、千鳥破風、欄間のステンドグラスなど当時の姿のまま保存されており、中も見学出来る。

平日の昼下がり、人も私しかいなかったこともあり、受付の方に少し案内していただいたのだが、南山御蔵入騒動の話と、それに関する展示が強く印象に残った。
百姓一揆は日本のあちこちで起こったもので、正直、私の中でも一つの大きな流れのような印象だった。
でもそれが起こった(起こした)場所ではその土地の視点があり、ずっと語り継がれてゆく。

数年前、母の知人である女性に「手記をワープロで打って欲しい」頼まれた。
自伝というほどの量ではないけれど思い出をまとめておきたいということで、私の持てるスキルを駆使してレイアウトし、印刷・製本してこの世でたった一冊の本に仕上げた。
個人のプライバシーに関わることなので内容の詳細は伏せるが、戦時中の話が印象深く、私が生まれ育った近くにもこんな出来事があったのかと驚いたものだ。
それが切っ掛けで、様々な場所に行き様々な話を伺いたい、という気持ちが高まったのは間違いない。

資料室には天保2年の高札なども展示されている。

外に出て、別の角度からもう一枚。

この旧南会津郡役所は、現在の南会津合同庁舎のすぐ横に建っている。
昭和46年に同庁舎が完成した際に、そのまま横に移したのだそうだ。
先の鴫山城跡からここまで道が繋がっていると伺ったので、次に訪れる機会があったら歩いてみようと思う。
 
 

大谷石造りの旧医院

和泉屋旅館、国権酒造の通りにある石造りの建物。
私の好み過ぎて様々な角度から撮ってしまった。

あとから和泉屋の方に伺ったところ、医院だったという。
入ると吹き抜けになっていて、奥にはタイル張りの大きな手術室があったという。
しかも大谷石造り。
素晴らしさの余り平伏したいくらい、私の願望を詰め込んだ建物である。
今後、何かで大谷石造りの医院が登場したらモデルはこちらだと思って欲しい。
 
 

田出宇賀神社と熊野神社

旅館の前を通り過ぎ、再び会津田島駅方面に戻る。
駅の反対側に向かうと、すぐにこの大きな鳥居が目に入る。

こちらは少々珍しく、田出宇賀(たでうが)神社と熊野神社という2つの神社が拝殿を共有しており、社務所も向かい合わせに建っている。
有名な会津田島祇園祭は、この二つの神社の祭礼なのだそうだ。
御朱印をお願いしたところ、田出宇賀神社では御代替わりの詳細なリーフレットを、熊野神社では厄除けの牛王宝印(ごおうほういん)もいただくことが出来た。
有難うございました。


 
 

太郎庵

田出宇賀神社と熊野神社のすぐ近くに、太郎庵の会津田島店がある。

ブッセは私の好物の一つで、こちらには季節のメニューがあると知り、立ち寄ってみた。
今のシーズンはブルーベリーと夏みかん。

夏みかんはピールも入っていて、甘酸っぱくて爽やかな味。
季節メニューは、この他にも生ブッセなどもあるらしく、いつか食べたいものリストに追加した。
もう一つは喜多方ラーメンプリン。
旅先なので少し迷ったものの、余りにも出来が良くて可愛いので買わずにはいられなかったのだ。
(撮る前に食べてしまったので、公式サイトから写真をお借りします)


※太郎庵公式サイトより

プリンの上には紅茶ゼリーのスープ、モンブランの麺、チョコレートのナルトとチャーシュー、ピスタチオのネギ。
見ていると不思議な気分になるくらいそっくりだが、口に入れるとプリンとしてしっかり美味しい。
太郎庵を見かけた際には皆様も是非。
 
 

和泉屋旅館

荷物をとり、いよいよ今夜の宿である和泉屋旅館へ。

昭和9年創業で登録有形文化財。
戦後には進駐軍の指定旅館となり、当時の応接室や会議室などがそのまま残っているという歴史の重みを感じる場所だ。

ガラス戸を開けると、すぐに朗らかな声が聞こえた。
出迎えて下さったのは大女将のキミさん。
部屋に荷物を置いて一息ついていると、冷たい麦茶が運ばれてきた。
少しお話ししてから、中を案内していただくことに。

「ここは偉い人が秘密の話をしたところ」と案内されたのは書院造の広いお座敷。
続き間は秘書の控室になっている。

こちらは応接室。

歩くと目に入るのが、このような窓や欄間だ。

曰く「当時の主がお金と納期は気にせず、職人さんに好きなように造らせた」とのこと。
何て素敵な雇い主。
そんな主に応えるかのようにあちこちに凝った細工が残っており、陽の差し込む廊下の窓の美しさは格別だ。

洋間の造りがまた素敵で、ただただときめく。
廊下側、庭側と部屋の両側に出入り口があり、このように広い縁側を経て、中庭に降りられるのだ。
今後、何かでこの造りの洋間が登場したらモデルはこちらだと思って欲しい。

建物はもちろん素敵だが、更にときめいたのは花だ。
静かで薄暗い廊下を撮っていると、何処からか甘い百合の香りが漂ってくる。
香りを辿ると、百合だけでなく様々な花が随所に生けてあることに気付いた。

私が泊まった部屋の花はホタルブクロだった。
旧くはあるが水回りもきっちりと磨かれ、この場所が大事にされていること、そして大事に迎えて下さったことが伝わってくる。
増改築を経て迷路のような造りなのも相まって、旅館に泊まっているというより、旧い時間に紛れ込んだような気持ちになった。
 
 
夕食は盛り沢山。
ボリュームたっぷりの馬刺し、天婦羅、茶碗蒸し、焼いた鮎を煮付けたもの、などなど。

どれもご飯が進む味だったが、中でも鮎と馬刺しが素晴らしく美味しく、おひつの誘惑に抗えずお代わりした。
明日、歩いて消化する予定と言い聞かせながら。

二日目、七日町編に続く。

[ 【旅】旧南会津郡役所と和泉屋旅館【会津田島】 ]TRIP, , , 2019/08/10 23:09