【青春18きっぷ旅】湯の町散策と伊勢屋旅館【いわき湯本】

はじめに

2019夏・青春18きっぷ旅行記の始まり始まり。
まずは、今回の旅の主旨をお伝えしておこう。

この記事を読んでいる皆様は常磐線の代行バスのことをご存知だろうか。
2011年3月11日の東日本大震災により様々な電車の路線が大きな被害を受け、運行が難しい区間は代行バスが走ることになった。
あれから約8年と半年。
現在、常磐線は富岡~浪江駅が代行バス区間となっている。

私は茨城県民で、常磐線の利用者だ。
何処に行くにもなくてはならないもので、愛着もある。
震災後、少しずつ駅や線路が修復され、代行バスの区間が短くなってゆく報せをずっと見ていた。
そしてとうとう、今年度中に全線開通予定という報告がなされた。
常磐線が元通りになったらそれで旅に出るぞ、と考えていたのだが、この夏ふと「途絶えているうちに、途絶えているものを見ておくべきなのでは」という考えが浮かんだ。
その夜から慌てて旅館探しを始め、お盆過ぎの旅行計画を立て、青春18きっぷを買い、電車に乗り込んだ。

旅程は三泊四日。
茨城を出て女川に向かい、戻ってくるまでに私が見たこと感じたことを綴ってゆく。

初日。
最寄り駅を出て、常磐線湯本駅で下車。

一気に女川まで到達するのは難しいので、何処で一泊するか色々検討した。
計算上は一日で宮城まで行けるのだが、湯本は近さ故にじっくり見て回ったことがなく、泊まってみたい旅館も見つけてしまったので初の湯本散策だ。
ちなみに青春18きっぷのお得度はプラス300円くらい、そんな日もある。

温泉神社

まず向かったのは温泉神社
境内には沢山の風鈴が吊され、涼し気な音を立てている。

駅からここまで歩いてきたので木陰のベンチで一休み。
爽やかな風が吹き抜け、快い───と思っていたところ、時折、妙になまぬるいものが混ざる。
不思議に思い近付くと、湧いているのは水ではなく、湯気の立つ熱そうなお湯なのだった。

流石は温泉地。
そういえば熱海の湯前神社にもお湯が湧いていた。

訪れた時、拝殿はお色直し中でブルーシートがかかっていたので写真は控えることにして、参拝後、御朱印をいただくために社務所へ。

これもまた温泉地の神社らしい。
御朱印とあわせ、一ついただいた。

野口雨情記念 湯本温泉童謡館

温泉神社の石段を降りたすぐ先にあるのがこちら。
『十五夜お月さん』『赤い靴』『青い眼の人形』『シャボン玉』『雨降りお月さん』などなど、雨情の童謡は大好きなので立ち寄ってみた。

常陽銀行の旧い建物を改装したものらしく、中に入ると立派なカウンターが目に入る。
雨情は北茨城の出身で、この湯本温泉で暮らした時期もあったそうだ。

広くはないが、このような貴重な本や大正~昭和初期のラジオや蓄音機などが展示されており、写真撮影も自由なので、気軽に足を向けてみてはいかがだろうか。

ことり菓子店

再び湯本駅近くまで戻り、ことり菓子店へ。

こちらは国産原料中心の手作り焼き菓子がメインのお店で、夏はかき氷も販売している。
頼んだのは梅。
一年熟成させたシロップは、梅酒のようなコクを感じる濃厚な味わい。
アルコールなど入っていないのに、ほろ酔い気分になりそうな美味しさだった。

焼き菓子もみんな可愛くて、旅の初日でなければ全種類買いたいくらい。

悩み抜いて、チョコケーキと夏季限定のマンゴーミルクファッジを購入。

みゆきの湯

ことり菓子店を出た後は、公衆浴場のみゆきの湯へ。

湯船は常温・高温とあり、それぞれ41度、43度くらいだったので熱めのお湯が好きな人向けだろうか。
でも、真夏に熱々のお湯に浸かるのは、とても気持ちがいいものだ。
のんびり手足を伸ばしていたところ、地元の方から「ここのお湯は熱いから、慣れるまで少しずつ入ってね」とのアドバイスが。
その方は先に上がったのだが、最後まで私の体調を心配して下さった。
無事に上がりました、大丈夫です。

おかめ

外に出て、斜め向かいのおかめへ。

ここは昼から夜まで通し営業をしており、ランチの部の定食も非常に美味しそうだったのだが、午後2時からのほろ酔いセットを頼んでみたくて3時くらいに入店。
まずは指先が痛いくらいキンキンに冷えたグラスで生ビール。

肴は、魚介の小鉢、枝豆、揚げたてサクサクのハムカツ!

これで1000円。
他の料理メニューもメヒカリの唐揚げや鰹の刺し身、どれも美味しそうで心惹かれたものの、根を張って呑んでしまいそうで、追加はビール一杯だけにしておいた。

いわき湯本の伊勢屋旅館

陽が翳り始めてきたので、今夜の宿である伊勢屋旅館へ。
私がここに決めた理由は二つ。
公式サイトにはこうある。

「築大正、古い建物の小さな旅館ではありますが
美味しいお刺身をお腹いっぱい食べたい
良く効く温泉で身体を癒したい
そんなお客様はぜひ当旅館をご利用ください」

それこそ、まさに私の望むものだ。
もう一つは、やはり公式サイトの中二階つきの部屋の写真を見て「これは絶対に私が好きな物件だ……!」と確信したからである。

そして通されたお部屋がこちら。

この立派な階段を見た瞬間、もう小躍りしそうになった。
レトロ旅館を巡るようになってまだ日は浅いものの、部屋に中二階がついた構造は初めてだ。
この階段、惚れ惚れする……。

これは中二階。

この造り、いつか絶対に使おう。

伊勢屋旅館のお湯は、源泉掛け流し。
早めにチェックインしたので一番風呂を使うことが出来た。
少し熱めのお湯は素晴らしく気持ちがよくて、疲れが溶けてゆく感じがする。
露天風呂ではないものの、窓が開けられ風が抜ける造りで、蝉の声を聞きながら湯船を独り占めした。

そして、そして遂に夕食の時間がやってきた。
このブログをずっと御覧になっていればお気付きと思うが、私は魚介が、刺身が大好きだ。
一体どんなものが食べられるのだろうと、期待に胸膨らませていると───

……これが一人分!?

この伊勢屋では宿泊料金が三種ある。
8000円、10000円、12000円。
料金の違いは食事の内容ということなので、刺身を愛する私は10000円で予約してみた。

凄い。
まさに「お刺身の宿」に相応しい盛りだ。
チダイ、イシモチ、キンメダイなどがお刺身、煮付け、塩焼きなどで並び、もうどれから手を付けていいか分からない。
煮つけも焼き物ももちろん美味しい。
だが刺身は甘みを感じるくらいの新鮮さで、特にチダイは食べるのが惜しくなるような味わいだった。
最後の頃はもう写真を撮ることをすっかり忘れ去ったが、鍋もまた旨味たっぷりで最後まで飲み干してしまった。
いわき湯本の伊勢屋旅館、刺身を愛する方には熱烈におすすめ出来る宿である。

初日に感動的な満足感を得てしまったが、旅はむしろ明日からが本番。
乗り換えの多いルートになるので、もう一度時刻表を確かめて就寝。

二日目、代行バス編に続く。

[ 【青春18きっぷ旅】湯の町散策と伊勢屋旅館【いわき湯本】 ]TRIP, , , , , 2019/09/14 20:36