【青春18きっぷ旅】代行バスからの風景と、ステイイン鈴家【常磐線・女川】

二日目。
昨日の夕食は部屋だったが、朝食はお座敷で。

席につくと熱いお味噌汁が運ばれてきて、美味しいきんぴらや干物と一緒にゆっくり味わった。

いいお湯、美味しい刺身、好みの部屋と十分過ぎるくらいに堪能したのだが、更に可愛いおまけがあった。
看板娘のトラちゃんである。

人慣れしているのか、カメラを近付けても逃げない。
豆タイルと猫の組み合わせなど幸せ過ぎる、何て素敵な宿だろう。
そんなことを考えながらチェックアウトを済ませると、道中で飲んで下さい、とよく冷えた缶のお茶とコーヒーを渡して下さった。

この伊勢屋旅館は、決して新しく豪華な宿ではない。
でも小さな気遣いが沢山あって、最初から最後まで幸せな気持ちで滞在することが出来た。
熱い湯と刺身と中二階と、トラちゃんが恋しくなったら、またこよう。
ただ一つだけ注意点を挙げるとすれば、女湯は余り大きくないので、朝食前のゴールデンタイムは混雑しやすいことだろうか。
お風呂そのものは24時間利用可能なので、上手く空きを見つけて入ることをおすすめしておく。
 
 
丁寧に見送っていただき、再び湯本駅へ。
2015年に改良工事を終えたという駅舎は休憩スペースも広々としている。

昨日、着いた時にはスパリゾートハワイアンズへのバス待ちと思われる客で溢れていたが、早朝は流石に人影まばらだ。
椅子に座り、伊勢屋でいただいた冷たい缶コーヒーを飲みながら、今日のルートをまた確かめる。
朝、この湯本駅を出て常磐線で仙台へ、そこから乗り換えて夕刻に終点の女川に到着予定。
その途中に、代行バスの区間があるのだ。


※JR東日本路線図より
 
 

代行バスの窓から見える景色

常磐線下りに乗り込み、富岡駅へ。

海側には重機があり、まだ復興の途中であることを物語っている。

これが代行バス。
ガイドさんも乗車しており、発車すると幾つか注意をされる。

①プライバシーに考慮し、乗車している他の客は撮らないこと
②帰還困難区域を通過するため、絶対に窓を開けてはならないこと

バスが走り出してすぐ、目に映ったのは緑に浸食された街だった。
長く閉ざされたままの窓やドアには土が吹き溜まり、そこに芽吹いた草が生い茂っている。
放置されたままの軽トラックの荷台にも丈の長い草が生え、風に揺れている。
コインランドリーもコンビニエンスストアもレンタルCDショップも、レストランであったと思しき建物も、看板は錆びつき、ドアは朽ちて剥がれ、駐車場はひび割れ、そのひびの隙間からまた草が伸びている。
そして道という道には厳重なバリケードが設置され、通行証がなくては通ることが出来ない。

衣料品店のショーウィンドーに、マネキンが立っていた。
ガラスは砕けて飛び散り、店内も緑の草で覆われているというのに、彼女は白っぽいブラウスのままそこに立っていた。
2011年の春の装いだったのだろうか。
だが、季節が変わる度に彼女の服を着替えさせた者は、もうこの街にはいないのだ。
あの日のことを、あの日からのことを、色々思い出した。
語りたいことは沢山あるけれど、一番最後の日にまとめるつもりでいる。
 
 
富岡から一時間ほどバスに揺られ、原ノ町駅へ。
(現在、下りの3便だけは原ノ町まで乗り入れている)


 
 
ここから再び常磐線に乗り込み、無事に仙台へ到着。
代行バスに予定通り乗れるかが今日の重要ポイントだったので、仙台の文字を見た時には安心した。

というわけで牛タンである。
駅から出る時間がなく、エスパル地下の伊達の牛たん本舗にて、味噌と塩のミックスにしてみた。
どちらの味付けも美味しかったが、個人的にはやはり牛タンは味噌系が好みだな、と再確認。
仙台の牛タンで何処が美味しいか知り合いに尋ねたところ、みんな違うお店の名が返ってきたので、各の好みとこだわりがあるのだろう。
気になるので、いつか食べ比べてみたい。
 
 
仙台駅から仙石線に乗り込み、まずは石巻まで。

乗り換えに少し時間があったので、駅近くのお店に立ち寄ってみることにした。
 
 

cafe 蓮

 

こちらのcafe蓮は古民家を改装したお洒落な外観で、食事もデザートも楽しめる。
ふと昨日、ことり菓子店でかき氷を食べたことを思い出し、仙台で食べたいかき氷もあったので、2019青春18きっぷはかき氷旅にしてみようと思い立ち、キウィを注文。

バニラビーンズのつぶつぶも愛しい濃厚なアイスと、甘酸っぱいキウィソース。
かき氷の中にはフルーツも隠れている。
店員さんも優しく、とても雰囲気の良いお店だった。
 
 
石巻からまた電車に乗り込み、終点の女川まで。
車内はボックスシート・ロングシートの他、このような窓際シートがあった。

ここに座り、海沿いの景色を眺めていると30分くらいで女川に到着。
丁度、陽が暮れてゆく頃で、金色とラベンダー色の空が美しかった。
 
 

ステイイン鈴家

駅からタクシーに乗り込み、今夜の宿であるステイイン鈴家へ。
あたたかい笑顔で出迎えて下さったのだが、「女性のお客様は久しぶりです!」としみじみされてしまった。
女川には観光ホテルを含め幾つも宿泊施設があるが、大半は長期滞在用、つまり復興工事に従事する方の利用を想定したもの。
その長期滞在者用の中に、何軒か観光客も宿泊可の宿があり、その一つがこのステイイン鈴家なのだ。
館内は全てシングルで、男女別の大浴場の他、各部屋にシャワー設備もある。

チェックイン後、荷物を置いて食堂へ。
「今日のお刺身はトビウオなんですよ」と運ばれてきたのがこちら。

昨日の伊勢屋も素晴らしかったが、今夜もまた魅惑の献立だ。
煮つけがポトフ風だったり、お鍋が塩レモン味だったりと、和洋の組み合わせが素敵で、盛りつけも美しい。
センスのいい方が作っているのだろうなという印象。
塩辛もご飯によし、酒の肴によし、の味。

長期滞在客を主とするためだろう、食堂ではご飯とお味噌汁は自分でよそい、水やお茶は給茶機から自由に汲む形となっている。
私は大学時代、一年間寮に入っていたのだが、その時の雰囲気を思い出した。
部屋には人をダメにするクッションがあったりして、ビジネスホテルとも旅館ともまた少し違う独特の居心地の良さに、旅先だというのにやけにリラックスしてしまった。

「女風呂は独り占めできると思います」との言葉通り、ゆっくりと使わせていただき、窓から女川の夜の海を眺めた後、就寝。

三日目、女川散策編に続く。

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