石岡瑛子展と性差の日本史。

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか

昨年末、東京都現代美術館の石岡瑛子展に行って来ました。
このような状況ですので現美でも予約優先チケットを発売しており、展覧会が始まったばかりの頃はなかなか取れずにいたのですが、最近は比較的空きがあるようで「今しかない!」という気持ちで清澄白河へ。

石岡氏との出会いはコッポラの映画『ドラキュラ』でして、私の性癖に影響を与えた一本です。
性癖。
そうこの『ドラキュラ』には性癖という言葉が似合います。
キアヌ・リーブス演じる若き弁護士ジョナサンとウィノナ・ライダー演じる婚約者のミナ。
しかしそのミナこそ、ドラキュラ伯爵の亡き妻の生まれ変わりだったのです。
そんなドラキュラ伯爵を演じるのはゲイリー・オールドマン、追うヴァン・ヘルシングはアンソニー・ホプキンス。
パワー押しというか、属性てんこ盛りというか、好きな人には物凄く刺さるタイプの作品だと思います。
その世界観を彩る衣装がゴージャスで官能的で最高なんですよ……!
それを手掛けた方こそ石岡瑛子氏、アカデミー賞の衣装デザイン賞に輝きました。
今回の展示には『ドラキュラ』の衣装も色々と出ていて、ルーシーの花嫁衣装はデザイン画から美しかった……!
「吸血鬼」という素材はもとから好きですが、石岡氏の衣装により、今のところコッポラの『ドラキュラ』は私の中の殿堂入り作品です。
最初にも書いたように石岡氏の作品としての明確な出会いは『ドラキュラ』だったのですが、今回の展示はパルコや山本海苔、資生堂ホネケーキなどもあって「これもそうだったのか!」と感嘆しきり。
『MISHIMA』は激しく三島であったし、『M.バタフライ』も平伏したいくらい艶やかでした、いつか真似たい。

でも一番凄いなと思ったのは「老いても革命を諦めない」という彼女の貪欲さ。
「感情をデザインする」というその言葉通り、物語を衣装で表現し続けるそのギラギラ感。
『The Cell』『The Fall(落下の王国)』『白雪姫と鏡の女王』と人生後半の作品を共にした監督ターセム・シン氏は元から石岡氏のファンだったそうなので、老いる暇さえなかったのかも知れません。

『ドラキュラ』は予告編が今一つ地味なのですが、こちらのソニー・ピクチャーズの紹介ページ一番下のスチルに心惹かれるものがありましたら観て損はないですよ。

現美に行く前に立ち寄ったみや古の深川めし。
ご飯はもちろん、お吸い物も具沢山の茶碗蒸しもさくさくの天麩羅も全て美味しい。


 
 
 

性差(ジェンダー)の日本史

展覧会繋がりでもう一つ。
千葉は佐倉の国立歴史民俗博物館で開催されていた『性差(ジェンダー)の日本史』の図録が届きました。
年賀状のハニワスキー、よく見ると頭にのっているのは鏡餅ではなく猫。
可愛い、癒やされる。

行きたかったのですが、どうしても時間が取れず、せめて図録だけはと通販したのです。
この企画展は歴史の中で「男」と「女」の役割が定められていく過程を追ったものですが、集められた資料は執念さえ感じる充実ぶりです。
遺跡などの祭祀の出土品を見るに、弥生~卑弥呼の時代は女性の首長も多く、男女の立ち位置にそう大きな差はないのですが、律令時代になると女性は表立った指導者から外れてゆきます。
(長くなるのでここでは触れませんが、女院や大奥についての記述もあります)
特に興味深いのが、遊女に関するもの。
残っている証文などから、中世の遊女は芸ごとや宿泊業など複合的な側面を持ち、母から娘、更に孫というように母系で引き継がれる一つの自立した職業であったと読み解かれます。
旦那さんも積極的に仕事を手伝っていたという記述もあり、現代社会の道徳観念で考えるとドラマ過ぎる……!と思ったりしますが、当時の日本の夫婦(婚姻)・法制度の変遷と表裏で結びついている部分でもあり、彼女達の生活ぶりを資料からあれこれ想像するのは勉強になります。
そういう彼女達の立ち位置も、歴史の流れによりまた大きく変わってゆくのですが、詳細は図録で。
残念ながら展示はもう終了していますが、図録は何と5刷を迎えたそう! すごい!
公式ミュージアムショップで取り扱っていますので、興味のある方は是非とも通販してみて下さい。
A4サイズで厚さ2センチ以上、写真も文字もびっしりです。

ゆうパケットの箱にもハニワスキーがいました。
可愛い。

現在は資料返却の様子をこんなふうにツイートされている他、企画に関するこぼれ話なども。


そもそも歴博は昨年春の『石鹸・化粧品の近現代史』の時からずっと行きたくて、しかし疫病のために長期閉館となり、歴博は広くてちゃんと見るなら一日がかりと知り、ならGo Toで泊まりがけで行けばいいのでは? などと考えているうちに行き損ねたので未練が募ります。
落ち着いたらゆっくり見に行きたい博物館の一つです。

[ 石岡瑛子展と性差の日本史。 ]diary, 2021/01/08 20:57