正倉院展とミイラ展。

先日、東京国立博物館の御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」と上野の国立科学博物館のミイラ展に足を運びました。
どちらも素晴らしい展示でしたので、記事にまとめたいと思います。
 
 

正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―

正倉院は奈良東大寺大仏殿の宝物庫。
天平時代の宝物を中心に、海を越えてもたらされた工芸品、刀剣なども数多く残されています。
今回の展示はどれもこれも素晴らしかったですが、個人的な一番は螺鈿細工の八角鏡!
青銅に琥珀と螺鈿で花や葉、鳥を描き、更に隙間にトルコ石がはめこんであるという贅沢で美しい鏡です。
余りに美しいのでグッズも色々買ってしまいました。

次に印象深いのは蘭奢待。
個人的に一度がっつりとネタに使ってみたい香木第一位です。
足利義政や織田信長などが薫りを望み、切り取った跡も残る伝説の香木。
焚くと一体どんな芳しき薫りがするのでしょうね……想像するだけで物語が一本書けそうです。

他にも伎楽面や織物、水差しなど展示されているのですが、その模様や形にはペルシャの面影があります。
あの絢爛豪華なペルシャ文化が中国・唐にもたらされ、更に朝鮮半島を経て日本へ──トルコで見たキャラバンサライを思い出しました。
異なる文化が交わるところには惨い戦争も起きたりしますが、こうして様々なものが混ざり合い、美しいものが生み出されてゆくのも確か。
やはり私はシルクロード大好き……ときめく……。

展示では他にも興味深いものが見られます。
これは正倉院「勅封」のレプリカで、撮影可能。

鉄製の大きな海老錠、天皇の宸筆(サイン)と麻縄で封じられていて、年に一度宝庫の扉を開ける「開封の儀」で鋏を入れられます。
レプリカとはいえ、こういうものを間近でゆっくり見ることが出来るなんて素晴らしい。
この他にも香炉や螺鈿の琵琶、それを納めるための豪華な袋なども再現されており、その華麗さには目を見張るばかり。

会期は今週末11/24までなので、興味のある方はお急ぎ下さいね。
 
 

ミイラ展

ミイラと聞いて真っ先に浮かぶのは、エジプトのアレではないでしょうか。
そのエジプトと双璧をなすのがアンデス。
この二つの地域は多くのミイラが見つかっていますが、生死観、宗教が異なりますからミイラ造りの目的も違います。
エジプトが基本的には死者の復活や来世という面が強いのに対し、アンデスは儀式の生け贄とされた幼いミイラなどもあり、文化における祭祀の差が見えます。
厳密には、私はミイラそのものより「ミイラを作る文化」の方に強く興味があるのだと思います。
グロテスクな話が苦手な方には申し訳ありませんが、エジプトではミイラを作る時、内臓や脳などは全て取り出し、内臓保存用の専用壺に納め、共に埋葬します。
でも、心臓だけは身体に残しておく。
心臓には魂が宿るとされ、死者の審判の際に羽根よりも重ければ怪物に食べられてしまうから。
神官のミイラの棺も彩り美しく豪華だったりして、昔の人々の「死」への感覚が伝わってくるのも面白いんですよ。

でも、展示で一番驚いたのは日本人のミイラです。
日本のミイラといえば即身仏という印象でしたが、宗教ではなく、学問の探究から自ら望んでミイラになった方がいたんですね。
江戸時代の本草学者が、自分の学説を証明するために「埋めて数年経ったら掘り起こしてくれ」と頼み、見事に成功したという凄い経緯です。
非常に状態もよく、手に握った数珠まではっきり分かるくらい。
それ故に少々怖い感じはしますが、本草学(薬草医学)の効果・研究を身を以て遺した、というのは凄絶以外の言葉がありません。
一見の価値ありです。

こちらは2020年2/24(月)まで。

[ 正倉院展とミイラ展。 ]diary2019/11/19 22:27