【旅】白百合の玉石垣と八丈島ジャージーカフェ【八丈島】

八丈島航路は、三宅島・御蔵島・八丈島の順に停まる。
一番最初の三宅島は早朝5:00くらいの到着なので、その少し前には船内放送が入り、人の気配がし始める。
だが一番最後の八丈島に着くのは更に約4時間後。
降りてゆく人達の物音を聞きながら更にうとうと。
海の状況により到着時刻は若干前後するため、この日は予定時刻より少しだけ遅れて、無事に八丈島の港に入った。
これが朝の橘丸。

船のメリットは安さと、何より「朝に到着するので島の滞在時間が増える」ということだろう。
私はレンタサイクルを予約していたので、お店の方が迎えに来て下さっていた。
バスが通ってはいるものの基本的に本数が少ないので、移動はレンタカーもしくはレンタサイクルも合わせた方がいい。
八丈島にコインロッカーはないが、バス停「旧町役場」の敷地内にある観光協会で荷物を預かってくれるので立ち寄ってみよう。
 
 

島内中心部から南原千畳敷まで

電動のレンタサイクルを借りて、島巡りに。
まずは南原千畳敷を目指す。
八丈富士が噴火した際に流れ出た溶岩が海に流れ、冷えて固まった溶岩台地だ。

旅行で海、と聞くと真っ白な砂浜を思い浮かべる方も多いだろう。
でも私はこの溶岩質の黒い浜に何ともいえない風情を感じて、心惹かれる。
特に八丈島は「八丈ブルー」という言葉があるくらい、海の青が澄んで深い。
黒い大地と群青の海のコントラストは神秘的で、物語を描きたくなる。
遠い昔の誰かもそう思ったかどうか定かではないが、八丈島にはこんな言い伝えがある。
私はこの民話をずっと前に本で知り、更に流罪の場所としても興味があったことから八丈島行きを決めたのだ。

八重根港近くの海水浴場。
ここに飛び込んだら最高に気持ちいいはず。

観光シーズンと少しずらしたため、平日の湾岸道路は時折車が通るのみ。
この道を! 独り占め!

サイクリングロードも整備されているため、船内には輪行の方も見受けられた。
自転車で島一周も楽しいかなと調べたところ、島の半分は上り坂でかなりハードという記事を見掛けて体力に自信のない私はすっぱり諦めることに。
それでも私が今回走った港~千畳敷~八丈島中心部はほぼ平地で、電動サイクルも借りられるので、普段は余り自転車に乗らない方も気軽に試してみてはいかがだろうか。

八重根港の近くにあるこれは一体何の祭祀跡……!? と思い近付いたところ、何と「井戸」の跡だそう。
明治時代に造られたもので、「メットウ井戸」と呼ばれている。
「メットウ」というのは八丈島の方言でギンタカハマという巻貝を意味し、螺旋を描いていることからその名がついたと説明にあった。
現存しているメットウ井戸の中でもかなり大規模なもので、文化財に指定されている。
 
 

八丈島ジャージーカフェ

朝の海を眺めた後は、スーパーあさぬまの横にある八丈島ジャージーカフェで朝食。
その名の通り、八丈島で育ったジャージー牛の牛乳から作った乳製品を楽しめるお店で、イートインも可能。

モッツァレラチーズのベーグルサンドにカフェオレ、特製プリン。
どれも甘みのある濃厚な味で、八丈島に着いた日の少し遅めの朝食に最適。
 
 
牛乳が美味しかったので、サイクリングも兼ねて更に同じ八丈島乳業が経営しているジェラテリア365へ。
こちらは八丈島植物公園内のビジターセンターにある。

明日葉(アシタバ)と塩ミルクのジェラート。
コクが深いのにさっぱりしていて、こちらも美味しい!
次に訪れた時には他の味も試したい。


 
 

大里の玉石垣

再び自転車に乗り、大里地区に残る玉石垣を巡る。

この石を一つ一つ積み上げたのは、八丈島に流刑となった罪人達という説が残っている。
浜から石を運び、積み、代わりに飯を得る。
そうして積み上げた石垣の上に木や植物を植え、防風林としたとのことだが、この百合の美しさを見て欲しい。

積み上げられた石と、強い陽射しに映えるこの真っ白な花々。
逞しいくらいに繁った緑の葉も素敵だ。
これを見ることが出来ただけでも、この時期に来て良かったと思った。
八丈島の旅からもう数年経ってしまったけれど、強い陽射しとこの玉石垣、そして真っ白な百合の景色は未だ鮮烈に刻まれている。


 
 

藍ヶ江水産の漬丼定食

少し遅い昼食は藍ヶ江水産の敷地内にある食堂へ。

ぷりぷりと分厚い漬丼は文句なしに美味しかったのだが、味噌汁の具が島のり、そして何と亀の手だったことに一瞬怯んでしまった。
「亀の手」といってもあくまでも名称であり、生物学的には「甲殻類」で海老や蟹の親類だ。
存在は知っていたものの今まで食材として対面する機会がなく、ついにその日がやってきた。
話に聞くように出汁が素晴らしいし、食べても美味しい。
貝類が好きな方は、間違いなくいける味だ。
また食べたい、次からはもう躊躇しない。
そんな亀の手のビジュアルに興味がある方は、こちらの記事をどうぞ。
スペインでも高級食材扱いらしいけれど、最初にこれを磯の岩から引き剥がして食べようと思った人の勇気を讃えたい。
 
 

山田屋のパッションフルーツモヒート

昼食の後は山田屋でお土産を物色。

ここには沢山の焼酎の他、ジャムや調味料、雑貨小物など色々揃っている。
酒瓶などは全て発送してもらった。
ドリンクのテイクアウトもあり、八丈島ジャージー牛乳や、それを用いたカフェラテなども飲める。
私はパッションフルーツモヒートにしてみた。


 
 

八丈島ガーデン荘のえいこば

八丈島観光協会前からバスに乗り、今回の宿であるガーデン荘へ。

今回、何処に泊まるか宿泊施設を調べている時に、何度も「えいこば」という名が出てきた。
「栄子婆」で「えいこば」と呼ばれているらしい。
この人ならば八丈島の様々な話をご存知なのではないか、とこのガーデン荘を選んだ。
結果から先に言うと、非常に楽しく、実り多い二日間だった。

ガーデン荘のその名の通り、敷地内は植物で溢れている。
恐らく人のいるスペースより植物達のスペースの方が多い。
旧い家をベースにあちこち繋げたような造りなので、お世辞にも新しいとは言えない。
隣の部屋の声も聞こえる。
だが楽しい。
 
 
荷物を置いて、夕食の前に再び外へ。
実は八丈島は温泉が多く、向かったのはやすらぎの湯。

露天ではないものの窓は開かれており、太平洋を眺めながらのんびり湯に浸かった。
ここも良かったのだが、個人的一番のおすすめは明日、ご紹介する。
 
 
ガーデン荘に戻り、一日目の夕食。
手前が八丈島名物のべっこうずし。

魚を日持ちさせるため、島唐辛子と醤油で漬け込むと切り身が鼈甲色になることから、その名がついたらしい。
スーパーのお弁当コーナーにも並んでいるくらいメジャーで、これと島焼酎が最高に合う。

民宿のお楽しみ「お客様が釣ってきた魚」である。
釣りたてをさばいたものが不味いはずもない。
みんなで美味しくいただいた。

夕食は食堂で宿泊客が一斉にいただく形だ。
客が揃うと、おじいが真新しい島焼酎の封を切る。
それをみんなで飲む。
翌日の夕食にはまた真新しい瓶がテーブルに置かれている、という寸法である。
(念のため書いておくが、飲めない人に無理矢理飲ませるということは絶対ない)
日本の様々なところから訪れた他人同士が酒を酌み交わし、楽しい話がぽんぽん出てくる。
コンパ的アレではなく「異業種交流会」の方が近い。
その中心にいるえいこばは、ファンタジー世界でいう「何でも知っているお婆」のような人だと思う。
程良く客達を繋ぎ、程良くネタを提供してくれる。
私も色々なことを話して、色々なことを教わって帰ってきた。

海は色々なものを運んでくる。
それに加え、八丈島は流刑地だった。
罪人と一口に言っても罪状は様々で、中には文化人も沢山いた。
彼等は島の人々に様々な知識をもたらし、結果的に文化を発展させたりもした。
そのため、流人が赦免され島を去る時にはお祝いに「御赦免料理」を振る舞ったという話も残っており、今でもその献立を出す店などもある。
「そういえば山田さん(仮)とこのお婆ちゃんは●●のことを●●(外来語)って言うんだよ」
異国の誰かが何らかの形で訪れ、交流し、一つの家の言葉に影響を与えたのだ。
話は途切れなく、島焼酎が進む進む。
わいわいと歓談しているうちに、夜は更けていった。

八丈島編・二日目に続く。

[ 【旅】白百合の玉石垣と八丈島ジャージーカフェ【八丈島】 ]TRIP, , , , 2020/06/01 22:08