シナリオライターになるには。

拍手からの質問だったのですが、もしかして他にも興味のある方がいるかなと思い記事にしてみます。

まず私ですが「ゲーム会社の知人にシナリオを書いてみないかと誘われた」という形なのでそこは全く参考にならず申し訳ありません。
それがきっかけでPCゲームメーカーに入社し、現在はフリーランスです。
シナリオライターは資格が必要な仕事ではないので、名乗れば誰でも「ライター」です。
ですが個人的には「最初の一つの仕事を取る」より「長く続けること」の方がはるかに難しい仕事だとは思います。
 
 

以下は、業界の片隅でシナリオライターとして17年書いてきた者からの老婆心トークです。

質問者様は文系の大学を志望されるということですが、その学生生活で詰めこめるだけ色々なものを詰めこんで下さい。
いえむしろ、高校時代の明日からでも。
勉強はもちろん、バイトでも恋愛でも何でも、とにかく多方向にアンテナを広げて、ゲームはもちろん映画でも舞台でも本でも漫画でもアニメでも観たり読んだりして、美術館や博物館に足を運んだりもして、自分の中の引き出しを増やして下さい。
そしてその引き出しを増やして中身を詰めることを続けていって下さい。
文章を書く仕事を長く続けるためには結局のところそれしかないと思っています、個人的には。
ちなみに私は高校時代文芸部でして、好きなものを好きなように書く機会があって、そういう「楽しい思い出」も今の原動力になっています。
 
 
質問は「物語を書く仕事に就きたい」ということだったので、ゲームのシナリオライター以外も視野に入れているのかも知れませんね。
この記事はあくまでも「女性向けゲームのシナリオライター」に絞ります。
まず受験勉強を頑張って大学に進学したとして、就職はして下さい。
社会人としての経験は損になりませんし、二足の草鞋で頑張るライターさんもいます。
編集プロダクションや、ゲーム会社もチャンスがあれば一度は通ってみることをおすすめします。
今はツイッターがあるのでいきなりデビューも不可能ではありませんが、ある程度のゲーム制作のフローが身に付いていないとシナリオディレクションが難しいですし、何よりこの仕事は「ご縁」がものすごくものすごーく大事です。
「全く知り合いがいない状態」だと、誰もが平伏すような文才があるか、かなりアグレッシブに自分を売り込める方でないとそう遠くない未来に行き詰まる可能性が高いです。
さて「最初の仕事」です。
もし編プロなどに入らなかった場合、ゲームメーカーさんでは外注シナリオを募集していることも多いので、まずはどうにかして一本とって下さい。
ツイッターなどでも時々募集を見かけます。
応募すると「トライアル」という形で短めの宿題が出ることが多く、そこで要求されるレベルの文章力があれば正式な依頼に繋がるはずです。
初めての執筆は恐らくショートショートなシナリオになるかと思いますが、その一本をちゃんと書き上げて納品して報酬を得れば、「経歴」になります。
以降はそれを積み重ねてゆくことになります。
また違うルートとして、絵描きさんの知り合いがいるのなら同人ゲームや同人CDなどを制作してみるのも良いかと思います。
 
 
では引き出しの話に戻ります。
そうして「シナリオライター」になったとして、いつどんな依頼がくるか分からないので守備範囲という名の引き出しが多いに越したことはないのです。
例えば「明日から戦国時代の話を書いて欲しいんだけど!」というスーパー急ぎのヘルプ案件が飛び込んで来たりもしますし「大正時代の話を書いて欲しい」というご依頼があった場合でも知識ゼロよりも、何らかの下地があった方が打ち合わせはスムーズに進みます。
なので広く浅く、出来れば広く深く雑学的に引き出しがあった方が自分の助けになります。
私もずっと勉強中です。
 
 
実録ノンフィクション的なものでなければ「物語」というのは一つの虚構であり、嘘ですよね。
どれだけ美しく丁寧に、時には残酷に醜く、本物らしくその嘘が書けるか。
その嘘を構築する発想と言葉は、自分の中からしか出てこないものです。
(もちろん、作家でしたら編集様、ゲームでしたらメーカーのディレクター様との打ち合わせを重ねながら)
文章を綴るというのは延々自分の中から言葉をすくい上げることなので、中に何もつまってないと浮かぶものがありません。
そして、出せばなくなるのでまた新しいものをどんどん吸収することも重要です。

もし何かの仕事の機会に恵まれた時、自分の中から出せるものがないというのは怖いことだと思いませんか?
企画があれば売り込むことも出来ますが、その最初の企画を生み出せないとそこで終わってしまうのです。
引き出しを増やすと言っても難しく考えず、最初にも書いたようにまずは色々なことに興味を向けてみて下さい。
失敗することも当然あります。
でもこの仕事のいいところはそんな失敗さえネタに出来ること。
そしてもしも、もしも文章の道に進まなかったとしても、その経験は絶対に無駄にはなりません。

長々と書いてしまいましたが、まずは大学の合格をお祈りしますね!

[ シナリオライターになるには。 ]diary2021/05/21 22:12