10/11にメッセージを送って下さった方へ

>片桐さんは文章を書く事が好き、物語を創るのが好き、ということに苦しく思った事はありませんか。

文章を書くことが辛いと思ったことはありませんが、いい設定やプロットが浮かばない時は「そろそろ消えたい」とは思います。
でもその悩みまくる地獄も創作の楽しさであり、〆切後は「次はどんな話にしようかな★」とまた地獄へウキウキ突進します。
ちなみに個人的体験で恐縮ですが、高校時代にイベントで初めてオリジナル小説の同人誌を出した時には一冊も売れませんでしたし、「(絵描きさんに一つでも多く参加して欲しいので)小説サークルの参加はやめて欲しい」とイベント会場の自スペ前で言われたこともあります。
しかし、絵描きさんには絵描きさんの苦労もあるんですよね。

などと語ってみたのですけれども。
送信者様が本当に求めているのは上のような回答ではない気がします。
「承認欲求の為に綴っている訳でもないつもり」と書かれていますが、同人にせよ商業にせよ、作家さんには大なり小なりの承認欲求があるものです。
書いたものを誰かに読んでもらいたい、できれば好きだと言ってもらいたい、というのは書き手の基本中の基本の感情で、当然のことです。
もちろん私も褒めてほしいですが、もう長く商業の世界にいるので感覚としては「物語を楽しんでほしい、新しい性癖に目覚めてもらえたらもっと嬉しい」という方が近いです。
送信者様は「どうしたら心に刺さった棘が抜けるのか」理解っているのではありませんか?

状況は少し違いますが、少し前のカレー沢薫さんのコラムを貼っておきますね。

『「劣等感に苦しまずに創作したい」というのは「健康的に覚醒剤をやりたい」と言っているようなものです』というのは個人的に手を叩いて賛同する至言です。
このシリーズのコラムは創作をテーマにしたものが多く、送信者様が共感できるものが他にもありそうな気がします。
最初にも書きましたが私は同人誌が一冊も売れなかったような人間で、優れた才能があったりもしません。
送信者様にアドバイスできるような立場ではないのです。
ただ「書く」ことはものすごく好きだと胸を張って言えます。
というかそれしかない。
「純な気持ちで書き始めた物語」だから「称賛を求めてはいけないのだ、そんなものは必要ないのだ」と思い込もうとしているのであれば、そんな思い込みは近所の川にでも捨てた方が楽になれる……と励ましたいところなのですが、そうして「認められたい自分」と向き合ってからがいよいよ本番。
地獄へウェルカムです、一緒に地獄を楽しもうではありませんか。
創作に限らず「承認欲求」という怪物との縁は死ぬまで切れません、恐らく。
ただ承認欲求は巧く飼いならせば「向上心」として前に進む力にもなります。
叶うなら少しでもお役に立ちたかったのですが、送信者様の棘を抜くのは私の言葉ではないはず。
陰ながら健闘を祈ります。

[ 10/11にメッセージを送って下さった方へ ]返信2022/10/12 09:36