八丈島二日目。
朝食をとり、装備を調えてガーデン荘の庭に出る。
今日は朝一番でヘゴの森へ向かうのだ。
ここも絶対に行こうと決めていたところで、ヘゴの森倶楽部で前もって予約しておいた。
サイトでは集合場所がえこ・あぐりまーとになっているが、ガーデン荘に滞在予定と告げると宿の庭まで迎えに来て下さった。
このあたりは宿泊しているエリアによるかも知れない。
いざ、太古の森へ。
ヘゴの森
果てなく広がる緑の葉に、圧倒される。
平成の(当時はまだ元号が変わる前だったのだ)東京とは思えない光景だ。
このヘゴの森一帯は私有地で、ガイド同行以外では立ち入り禁止となっている。
ちなみにこの山には、有名な黄八丈の染料となる木も生えている。
八丈島のこのヘゴは熱帯・亜熱帯の植物で高温多湿を好む。
ここ八丈島が日本国内最北にあたり、天然記念物にも指定されている。
これは若木。
伐採されたもの。
この模様を生かした飾りなども作ったりするそうだ。
山の神のおわす場所。
ガイドさんからせっかく教わったのに名を失念してしまったのだが、啼き声が何とも不気味な鳥がいる。
そして昔は、この山で炭焼きをしていたという。
もし私が炭焼きで火の番をすることになり、灯り一つないこの山の真夜中に低い呻きのような啼き声が響き渡ったら裸足で逃げる。
そんな啼き声であった。
もっともこの森なら、神や人ならざるものが棲まうと言われても全く驚かない。
それくらい人の世界から隔絶された、静かで深い森なのだ。
アカハライモリにも無事遭遇、可愛かった……!
しかし私には動くものを撮る技術がないので記憶の中のみ。
他にも珍しいシダ類・植物が沢山あったりと充実した時間を過ごせるので、興味が湧いた方は是非。
時間は大体1時間半~2時間程度みておくとよい。
末吉温泉「みはらしの湯」
ヘゴの森を出てガイド氏に再びガーデン荘まで送っていただく。
午後はバスに乗り、本日の温泉へ。
末吉温泉「みはらしの湯」は、私の中で「海を眺める温泉・栄光の一位」に輝いている場所である。
基本的に温泉にカメラを持ち込まないので自分で撮った写真はないのだが、公式サイトだけでも素晴らしい景観であることは伝わると思う。
遮るものは何もない、見渡す限りの紺青の海。
船すらも見えない。
そんな場所で海風を感じながら熱い湯に浸かる爽快感を、想像してみて欲しい。
そして是非、味わって欲しい。
少しくらいの嫌なことなら吹き飛ぶ。
温泉が好きな方なら、この湯に浸かるためだけに来てもいいと思う。
ただし八丈島の中心部からは離れているので、バスの時間に注意。
中田商店のパッションフルーツフロート
温泉から戻った後は、ガーデン荘すぐ側の中田商店へ。
ここでは八丈島名産の明日葉を使ったソフトクリームが食べられる。
さっぱりと甘く、苦みなどは感じない。
美味しそうなメニューがあったので、更に注文。
パッションフルーツフロート。
とろりと濃厚なパッションフルーツのジュースに、ソフトクリームをたっぷりと。
平日の昼間だったせいか客は私一人しかおらず、店主のお婆ちゃんと沢山喋った。
「実は先月、ヘリで東京の病院へ運ばれてね」
「えっ!?」
観光客としてのんびり過ごしていると忘れがちだけれど、島の暮らしならそんなこともあるだろう。
話している最中はお元気そうだったが、少し前に亡くなられたとネットで見かけた。
楽しい時間を有難うございました。
ガーデン荘を選んで正解だったな、と思ったことがもう一つある。
小さなスーパーが横にあるのだ。
八丈島にコンビニエンスストアはなく、生鮮や日用雑貨などはスーパーで購入することになる。
昨日の記事で書いた八丈島ジャージーカフェのあるスーパーあさぬまは観光協会からも徒歩圏内で、お弁当や魚など美味しそうなものが沢山売っていたので、着いた足でそのまま食糧調達に向かっても楽しいと思う。
そのような大きなスーパーは空港や観光協会のあるエリアに集中しているが、ガーデン荘の横にはその名も八丈ストアミニミニという小さなお店があるのだ。
ドリンク、お弁当、アイス、野菜、日用雑貨など一通り揃っていて便利。
夕方からは、泊まっていたお客様とのご縁で八丈太鼓の稽古を見学させていただけることになった。
八丈太鼓の面白いところは、太鼓を横向きにして台座に乗せ、両方から二人で叩くこと。
私も少しだけ叩かせていただいたが、思いの外、力が要る。
コツももちろんあるだろうが、私が叩くと気の抜けた音にしかならないのだった。
この八丈太鼓は女性が叩くことでも知られていて、ぱきっとした黄八丈を身に纏い、たすき掛けで打ち鳴らす姿はとても格好いい。
二日目の夕食。
お刺身は新鮮で、フライや煮付けも美味しい。
この日はまた新しい宿泊客が増えていて、もう10年以上ガーデン荘に来ているとのこと。
何度も来たくなる気持ち、分かる。
えいこばには長生きして欲しい。
当然ながら、この夜も島焼酎を呑んだ。
翌日の朝食。
魚三昧の日々であった、幸せ。
船が9時台に出るので、少し慌ただしい。
早めに朝食を出してもらい、食べながらもまた色々話して、バスの時間ぎりぎりまで喋って、慌てて飛び乗った。
憧れの青ヶ島
底土港の船客待合所は2014年にオープンしたものなので、新しく広々としている。
ちなみに八丈島には底土・八重根と港が二箇所あり、波の状況によりどちらを利用するか決まる。
島の方も分かっているし、バスの運転手さんなども把握しているので大丈夫だとは思うが、向かう港を間違えないように注意されたし。
船を待っていると、青ヶ島行きの船のアナウンスが聞こえてきた。
青ヶ島。
昨日の民話にも出てきた青ヶ島。
それは選ばれし者だけが行ける島。
ヘリは一日一便で9席のみ、船の就航率も50~60%程度。
「今日は船が出るんだ……!」
そう、今回は天候に恵まれた旅で、この日も朝から眩しいくらいの快晴であった。
東京に戻らず、そのまま青ヶ島に行ってしまいたかった。
後ろ髪引かれる思いとはまさにこれ。
ああ、あおがしま丸よ。
私はあなたに乗りたかった。
などと脳内で盛り上がっていたところ、帰りの船で先日、青ヶ島に渡ったという旅行者の方と偶然話す機会に恵まれた。
シーズンオフで晴天なら当日でも比較的席を取りやすいらしい。
次はスケジュールに余裕を見て八丈島に滞在し、青ヶ島に渡ってみたい。
帰りはさるびあ丸。
この船体は2020年6月に引退が決まっており、三代目さるびあ丸が就航予定だ。
二代目さるびあ丸は、行きに乗った新しい橘丸と比べるともちろん古さは否めないのだが、記念に乗ることが出来て良かった。
乗船予約時には、どの船に乗るか分からないのだ。
島を出る時には快晴だったのに御蔵島に着く頃には雲行きが怪しくなってきて、遂には食堂に揚げ物ストップの札が出た。
そんな大揺れの中、注文可能のメニューの中から頼んだのはオムライス。
正直、オムライスの味よりも窓の向こうの雨風の凄さの方が記憶に残っている。
『天気の子』の主人公が乗船するのはこのさるびあ丸であり、そこでひどい嵐に遭遇する。
私が乗船していた時は流石に嵐という程の大時化ではなかったが、お陰で映画を観た時には脳内で臨場感たっぷりに思い出すことが出来た。
三宅島を越え、再び東京へ。
これにて八丈島の旅は終了───なのだが、味をしめた私の島旅はまだまだ続く。
リゾート・シーピロス
おまけに、八丈島での宿泊候補だったホテルを一軒ご紹介しておく。底土港に近いので、次に青ヶ島チャレンジをする時に泊まってみようかなと考えている。
明日からは沖縄編。
約一週間分続く予定です。