※この記事は旧ブログからの再掲となります。情報は2017年12月のものです※
今回は青森の新むつ旅館さんをお届けします。
国内には現在も宿泊可能な元・遊郭の旅館が幾つかあります。
何処もそれぞれに赴きあり一度は足を運んでみたいと考えているのですが、こちらの新むつ旅館さんををその一番目に選んだのは「階段」に心惹かれたからです。
とにかく素敵なんですよ、階段。
というわけではやぶさです。
人生初青森、そして人生初はやぶさ。
しかしこの日は、この冬一番目の大寒波で東北が大荒れとなっており、東京駅は大混雑。
幸い私が乗る予定だったはやぶさは定刻通りに発車したのですが、こまちは遅延が出ていて連結は見られませんでした。
乗り物の中での食事はいつもと違った楽しみと美味しさがありますよね。
東京駅地下のグランスタ『煮炊き屋本舗 まつおか』さんでおかず詰め合わせを買い、それを肴に飲……などと浮かれているうちに仙台あたりで車窓の外が猛吹雪に。
不安に駆られながらも八戸に到着。
これくらいで済んで良かった……。
八戸からJR八戸線に乗り、小中野駅で下車。
ここに憧れの宿『新むつ旅館』さんはあります。
明治31年に創建された『新陸奥楼』という遊郭の建物を、そのまま旅館として使用しているんです。
中に入ると出迎えてくれるのがこの見事な階段。
来て良かった……!! と思いました、もうこれだけで。
眺めているだけで物語が浮かんでくるようではありませんか。
シーズンオフということもあり、その日の宿泊客は私のみ。
「何処でも好きに入って見て下さい」という女将さん(紅美子さん)のお言葉に甘え、沢山撮らせていただきました。
とにかく建物がもう……この写真では魅力を伝えきれません。
あの遊郭独特の建物の構造を、図面に書き起こすスキルがないのが悔しいです。
表階段と裏階段とか。
遊郭のお客さんリストなども見られます。
髪型や着物・布の種類、身長やほくろの位置など細かく書き込んであって面白い!
読んでいるだけで一晩経ちそうです。
娼妓と将棋をかけた部屋札が素晴らしく粋ですよね。
私がいつかこれをネタに使うことがあったら、新むつさんからだと思って間違いないです。
炭を入れて使うアイロンなども一緒に飾られています。
夕食はほっこりあたたかくて美味しい家庭料理。
とにかく烏賊が! いかが! 美味しかった!
あの味付けを教わりたい。
新むつさんは「旅館」ではありますが「民宿」に近いと思います。
(浴衣、歯ブラシ、バスタオル等は部屋にあります。ドライヤーはお風呂場に)
そもそも女将の紅美子さんがかなりおおらかフレンドリーな方で、個人的には「田舎のおばあちゃんの家に遊びにきた」というのが一番近い印象。
問題ない、この素晴らしい建物を見てみたい、泊まってみたい、という方は迷わず電話を。
(予約は電話のみ。しかも紅美子さんが買い物に出ている時は繋がらないという仕様です)
私がここを選んだ理由のもう一つに、紅美子さんからお話が伺えるというものがありました。
紅美子さんが嫁いで来られた頃にはもう遊郭は営業を終了していましたが、旦那様、そしてお義母様がここで生まれ育った方だそうで、遊郭営業時のお話を沢山ご存知なんです。
色々なことを明るく朗らかにお話して下さるのですが、波乱に富んでいてそれだけで濃密な物語になりそう。
遊郭は地方色があり、それぞれの土地ならではの歴史や物語が形成されていて勉強になります。
次から次へと興味深い話が出て来て、ずっと聞いていたかったです。
二日目、下風呂温泉編に続きます。