【旅】茶琴神明のあんみつと国立歴史民俗博物館【佐倉】

かねてより足を運んでみたい博物館があった。
千葉は佐倉にある国立歴史民俗博物館である。
何度も興味を惹かれる企画展示があったものの都合がつかず、更にはコロナによる長期休館も重なったりして憧れは増すばかり。
だがこの春また興味のある展示が始まり、遂に足を運ぶことが出来た。
想像よりもはるかに広く、はるかに充実した博物館だったので全力でご紹介する。

歴博は京成佐倉駅、JR佐倉駅のどちらからもバスが出ているが、今回は立ち寄りたいお店もあったため徒歩で移動。
京成佐倉駅に降り立ち、まずは昼食。
坂道をのんびり上ってゆくととんかつおかやま食堂に着く。

とんかつのお店だが皆さんの感想を読むと刺身も美味しいということだったので、揚げ物と刺身の両方が楽しめる日替わりランチを注文。

ヒレカツとコロッケは揚げたてさくさくの熱々で、刺身も新鮮でぽってり厚くとろける旨さ。
更にデザートの杏仁豆腐までついて1100円。
ご近所にこんなお店があったら絶対に通ってしまう。
コロナ禍ということもあるのか、レジ近くのテーブルには大量の持ち帰り用とんかつ弁当が積み重なっていた。

そこから歴史民俗博物館に向かって歩いていくと、こんな可愛い休憩スペースがあった。

この辺りは江戸時代には同心町と呼ばれ、長屋や牢獄などがあったらしい。
そう、佐倉は城下町であり、今から向かう歴博はその城址公園のすぐ側に建てられたものなのだ。
しかし明治維新後は城址に陸軍が置かれ、櫓や門は壊されてしまったのだと説明があった。
でも今は可愛らしく咲き誇るチューリップや菜の花、遠くには桜や椿。
こんなところで誰かとお喋りしたら楽しそうだけれど、それはもう少し先の話になるのだろう。

春の景色を楽しみながらまた歩いてゆくと、佐倉市立美術館に出る。

この建物の正面エントランス部分は大正時代に建てられた旧川崎銀行佐倉支店が用いられており、西洋風のファサードと銅板で葺かれた屋根には青海波という、この時代らしい外観となっている。
「民俗博物館は一日がかり」と言われていたので残念ながらここは中を覗いただけで去ることになってしまったけれど、一階奥に入っている陽当たりの良さそうなカフェ ブォナ ジョルナータのプリンがとてもとても美味しそうだったので、今度ゆっくり訪れようと決めた。

佐倉市立美術館の目と鼻の先に、茶琴神明というオーガニックカフェがある。

築100年というこの建物の中に入ってみたくて、そして美味しそうな餡蜜を食べてみたくて、佐倉に行ったら絶対に立ち寄ろうと決めていたのだ。

この組子の美しさ……!
時間を見つけてはレトロ物件に足を運び、色々な組子を撮っているけれど、こういった西洋風の模様は初めて見た気がする。
古いガラスと相俟って、何ともロマンチックで儚い雰囲気を醸し出している。

竹の器に美しく盛りつけられた餡蜜はヘルシー仕様で、豆腐と豆乳で作った自家製アイスクリームがさっぱりとしていて美味。
セットの冷茶も鉄瓶に水出しで丁寧に作られている。
「お茶のお代わりは如何ですか」と声をかけていただき、こんなお座敷でのんびり読書するのは素敵だろうなと思いつつ「一日がかり」という言葉に急かされて店を後にした。

そこから20分くらい歩くと城址公園の入り口に着くのだが、道なりの景色がまた素晴らしかった。
桜の薄いピンク色と菜の花の黄色がずっと続いていて、自分は今まさに春の中を歩いているという気持ちになる。

歴博の入り口から少し長い坂を上ってゆくと、建物が見えてくる。
(実は春に行った時に外観を撮り忘れたので、これは二度目の夏空モードです)

コロナ禍により、入り口での検温、来館者カードへの記入が義務づけられている。
尚、エントランスホールには100円戻るタイプのコインロッカーがあるので、荷物は預けておくべし。

中はとにかく、とにかく広い!!
先史から現代までを六室に分けて展示しているのだが、広い。
そして情報密度が濃い。
「一日がかり」は誇張でも何でもなく、全て見終えた頃には閉館時間で、それでも後半はやや駆け足だった。
中は基本的に撮影可能なので、ざっくりとご紹介してゆく。
 
 

第一室 先史・古代

最終氷期の人類の生活から始まり、稲作や古代国家の成立など。
皮を鞣した服や毛皮のブーツも可愛いし、食事も美味しそうなどと考えてしまったものの、恐らく私は苛酷な寒さの中を生き抜けない。

名前はまだない猫。
可愛い。
この猫達は、カラカミ遺跡で日本最古のイエネコの骨が発見されたことに基づくらしい。

自分の中で猫の登場はもう少し遅いように記憶していたので驚いたけれど、これからも遺跡などの調査により、塗り変えられるものが色々あるのだろう。
もっとも、このイエネコの骨に関してはまだ科学的根拠が完全ではなく、推測の部分もあるようだ。
ただもし、もしも私がこの時代の話を書くことになったら猫を登場させると思う。
私は研究家ではないから、一つの可能性があればそれを生かす。
猫がいたら可愛いし。
 
 

第二室 中世

12世紀末頃の貴族の邸内。

復元された御帳台。

巨大な羅城門。
恐らく対比のためだと思うが門の傍らに鹿が配置されいて、それが可愛い。
名前はまだない猫もだが、歴博の展示の動物達はどれもみんな可愛い。

京の街並み。

朱印船貿易の船に、鉄砲の分解パーツ展示まである。


 
 

第三室 近世

伊勢参詣で賑わった椋本宿の旅籠「角屋」の復元模型。

しかもこのように地方ごとの宿の食事の違いまで展示されていて面白い。

この人形は、「解体新書」を読んだ寺子屋の先生が作成したものらしい。
そんなふうに西洋医学が少しずつ一般にも浸透していったのだ。


 
 
 
第四室は「民俗」がテーマになるが、ここも含めると今回の写真が多くなり過ぎてしまうので次回の記事で詳しく触れた。
 
 
 

第五室 近代

大正時代の横浜港と、当時の旅行案内。

歴博はこのように様々な時代の街並みや武家屋敷などがジオラマで再現されていたり、「民俗」というその名の通り市井の人々の風俗や暮らしに関する膨大な資料が展示されていたりする。
今回はかなり写真多めの記事だけれど、それでも本当にごくごく一部。
庶民の暮らしを理解するということは、そこで生きる人々のリアルを想像しやすいということになる。
何となく知識として覚えていたものの解像度が上がるというか、歴史が立体的に感じられるようになるはずだ。
商業・二次を問わず、創作をする人に是非、是非一度行って欲しい。
もちろん、創作をしない方も興味が湧いたら是非。

明治22年山葉(現・YAMAHA)楽器製造のオルガン。
古いオルガンや蓄音機の装飾の美しさにはいつも惚れ惚れしてしまう。

みんな大好き同潤会アパートの復元模型。

薬のパッケージ、月経帯の広告や、避妊用具なども網羅。

現代ではフェムテックとして吸水ショーツや月経カップなど様々なものが世に送り出され、私達はそれを手に取ることが可能だ。
繊細なレースのランジェリーを身に着けることだって出来る。
でも、脱脂綿を詰めたり糠袋(戦時中)を使った時代だってそう遠くはない。
こういう資料を眺めていると、開発して下さった方に密かな感謝を贈りたくなる。

おまけ話。
ニルアドを書いていた時、資料として何冊もの雑誌を購入した。

特に面白かったのが婦人雑誌で、まさに月経帯の広告が大きく掲載され、メイクや髪型の紹介、料理コーナーなど内容盛り沢山。

中にはご令嬢からの片想い相談などもあり、読んでいると面白いし、恋やお洒落の悩みはいつの時代も同じなんだな、と共感したことを思い出した。

広大な歴博では、大正~昭和の浅草の街の一角まで再現されている。

この薬局の取り扱い品が性病・シモ関係ばかりなところに学芸員氏の意志とセンスを感じる。
高床式倉庫の名前はまだない猫もだが。

実はとある展示室のとある展示を見て「こんなものまで」と驚いた。
知識としては知っていたが「本当にあったのか」というものだ。
所謂「部落差別」に関わる墓石の模型で、その人権無視ぶりに怒りを覚えるようなものだが、撮影不可エリアだったこともあり詳細は控える。
差別問題に関しては「寝た子を起こすな」的に風化させるべきだという意見もあり、それも頷ける。
ただ事実として日本の歴史に存在したのは間違いなく、何らかの形で触れることがないとも言えない。
ならば、正しい知識と共に差別を生まないように導くことも必要ではないかとも思うのだ。
そういうものを敢えて展示することに歴博の凄さを感じるし、そういうところだからこそ「性差の日本史」のような企画展示が可能だったのかなとも考える。
 
 

第六室 現代

この部屋は戦時中から戦後が中心で、佐倉連隊兵舎の内部の様子なども知ることが出来る。

現代に近くなってくると、1962(昭和37)年に建設された赤羽台団地の復元なども。
ベランダには洗濯機や洗剤まであって細かい! そしてインテリアが可愛い!

ここまで回って地階の展示室から一階に上がると、既に陽が翳り始めていた。
もう一つ見たかったものがあり、ミュージアムショップへ向かう。

これが歴博の「桜の屏風」だ。
公式ツイッターでその呼び名を知ったのだが、何と風流だろう。
ご覧のように佐倉城址公園は沢山の桜が植えられており、歴博を訪れるには最高の季節だった。

お住まいの地域によってはお得かも知れない「旅する佐倉1日きっぷ」が発売されたので、これもご紹介。

・京成線各駅~京成佐倉駅の「往復乗車券」
・ちばグリーンバス「フリー乗車券」または佐倉市観光協会「レンタサイクル券」
・佐倉市内で使える食事券(選べるごはん券)
・佐倉市内で使えるお土産券(選べるお楽しみ券)

以上の内容で電子チケットが税込み3900円、紙が4070円。
選べるごはん券のお店は今回諦めたカフェ ブォナ ジョルナータも入っているし、ヤチクロバーガーもおかやま食堂と迷ったのだ。
ただ歴博はじっくり見ると本当に一日がかりなので、レンタサイクルで回るのなら早めに来て午前に周辺観光、午後に博物館、という感じがよいのではと思う。
私は歴博に四時間半ほど滞在していた計算になるが正直もっとゆっくり見たかった。

また来るぞ、歴博。
というわけで夏の歴博編はこちら。

[ 【旅】茶琴神明のあんみつと国立歴史民俗博物館【佐倉】 ]TRIP, , , 2021/09/04 22:08