7/15にメッセージを送って下さった方へ

>片桐様はじめまして。私は幼い頃からゲームが大好きで~

初めまして。
ニルアド、オラソワ、そして獄ストをお手に取って下さいまして有難うございます。
送っていただいた文章から、五右衞門ルートを丁寧に読み解いて下さったことが伝わってきて、制作に携わった者として心から嬉しく思います。

焼き味噌のあのシーンはですね、というより五右衞門ルート自体がそうなのですが「乙女ゲームの感情描写で何か今までと違うことが出来ないかな」と考えた結果なんです。
通常の乙女ゲームは送信者様が仰るように「ヒロインとプレイヤーは情報レベルが同じ」になりますよね。
(ゲームシステムにより彼視点が入ったりするタイトルもありますが)
一般的にプレイする方とヒロインの感覚(シチュエーション)にずれがない方が感情移入しやすいのは確かだと思います。
私もそれは大前提として書く時に意識してはいます。
ただあの二人の恋愛の醍醐味(というと五右衞門に嫌がられそうですが)は「覚えていない」ことであって、だからこそあの二人でしか描けない感情を体験していただきたかったんです。
これは獄ストに限ったことではないのですが、物語の中だからこそ味わえる世界や感情というのがありますよね。
私達は令和に生きていますから大正時代ではもう生きられませんし、階級制度の厳しい島で花婿捜しをすることもありませんし、死後の地獄も想像するしかありません。
でも、物語の中ではそれを自由に体験出来る。
乙女ゲームに限っていえば「初恋」を何度でも、様々なシチュエーションで味わえる。
色々なところで書いていますが私は「初恋」を描くのが本当に好きで好きで大好きで。
あの二人の「初恋」は甘いだけのものではありませんでしたが、だからこその結びつきもあるはずです。
実は今月で獄ストはちょうど発売一周年なんです。
なので素敵なタイミングで感想をいただけて、そういう意味でも嬉しかったです。

彼のルートのラスボス戦に関しても、色々と解釈して下さって有難うございます。
許し難い存在をそれでも咀嚼するというのは膨大な精神力を使われたことと想像いたします。
ただそれにより、深く物語を楽しめたと言っていただけるのでしたら書き手としては冥利です。
そういったものもまた、上に書いた「物語でしか味わえない何か」ではないでしょうか。

ちなみに私も生前の二人の会話は大好きです。
あのシーンもまた、ああいった形で入るので、厳密にはプレイする方と情報が同等ではないんですよね。
でもだからこそ、あの二人のそれぞれの感情を想像して楽しんでいただけたらなと思います。

2万8000文字というのは、文章を仕事にしている私から見ても少なくはない数字です。
獄ストという作品、そして彼等にそんなふうに真摯に向き合って下さって嬉しいです。
ちなみにメッセージフォームからの文章はもっと長い方も沢山いらっしゃいますのでご安心下さい。
これからも楽しんでいただける作品を目指して精進いたします!

[ 7/15にメッセージを送って下さった方へ ]返信2023/07/16 22:45